三陸ラビリンス気仙沼(弁護士東忠宏)

気仙沼の弁護士東が,弁護士活動において考えたことなどを書いています。毎週日曜日に更新記事をアップするのを、目標とします。

債務整理ー給与差押え・預貯金差押え・自宅への動産執行の通知を受けた方に向けて②

第2 給与差押え・自宅への動産執行の通知

 

これら裁判所からの通知を受け取った場合について。

 

「1/4でも給与の差押えがされたら生活できない。」「執行官が自宅に来たら,家族に債務が知られて大変困る。」

→すぐ弁護士に相談して下さい。

 

対処法は,先のブログ(①)の3と同じことが考えられますが,私は,破産申立てに伴う中止命令申立てとすることが多いです。

 

ここからは,この「あと○日で給与支払日のところ,給与差押えがなされた(or動産執行が○日後と指定されたなど)と言う相談者が来た」場面を想定した,取扱経験がない弁護士さん向けの記述です。

 

⑴ 初回相談のタイミングで,債権者・第三債務者の資格証明の取付けも始めた方がいいでしょう(庁によっては,中止命令の申立てに際しては略してくれる場合もあるが。)。

⑵ 債務名義を残していない相談者も多いので,その謄本取得のため,当該事件の委任状も取得しておいた方がいいでしょう(債権者に連絡してコピーをもらうのも手ですが)。⑷のとおり,執行事件用の委任状も必要です。

⑶ 次回の打ち合わせ日を数日後とかに設定し,その際に依頼者が集められた書類等でもって,普段の6~7割程度の出来でも取りあえず申立て,中止命令申立ても添える,ということになるでしょう。

まずは中止命令,本体は追完,追完で。

私の経験上,中止命令は,まず翌日までには発令されます(個人再生申立てに伴う根抵当権実行手続中止(民事再生法31条)ー住宅ローンではないーで大分揉まれたことはあります。)。

⑷ 破産裁判所が中止命令を発令しても,その正本を,執行裁判所に提出しないと,執行手続は止まりません。破産裁判所が支部・執行裁判所が本庁とかだと,その送付の所用日数とかも見越して準備する必要があります。

執行裁判所への提出に当たっては,当然,執行事件用の委任状も必要です。

(なお,給料日の時期によっては,代理人から債権者・第三債務者に直接,中止命令が発令されたので取立てをするな・応じるなと連絡してようやく間に合う,というタイミングもあり得る。)

⑸ 給与差押え=第三債務者が勤務先だと,中止命令(これを受けた執行裁判所からの通知)の内容からして,破産を申し立てたことが知られます。そのことを,依頼者に予め説明しておく必要があります。

⑹ 「給与差押えが中止になったところで,給与の1/4の取立が止まるだけ・1/4は勤務先がプールするので,債務者が生活できないことには変わりないじゃないか。」

←中止命令を得たら,債権者に連絡して,債権差押命令の取り下げを求めるのです。

債権者としても,取り立てできない差押えを残しておく意味はないので,通常は取下げに応じてくれます(そういう実務を形成して行くべく,皆でその様に働きかけをしなければならない。)。

 

受任通知を送ったら債権者からの取立が止まる,以後,依頼者がなかなか破産申立ての準備に動いてくれない,,,は弁護士あるあるですが,この差押えに対する破産+中止命令の申立ては,そういう懸念がなく大急ぎで準備が進んでいくので,私は結構好きです。

毎年,年に1,2回はしています。

なお,動産執行は,中止命令が出るとヤレヤレということで,取下げに向けて働きかけるでもなく,つい存在自体を失念してしまいがちですが,取下げにならないのであれば,破産手続開始決定正本の提出も忘れずに。

 

【追記】

改正民事執行法によると,給与につき取立権の発生時期は,(養育費債権等を除き)債務者への送達から4週間となりました。

もっとも,上記⑹のとおり,取り立てされなくとも第三債務者は支払をプールしますし,債務者側の中止命令申立て取り組みの眼目は,それを得た上で債権者に差押えの取下げを迫るところにあります。