三陸ラビリンス気仙沼(弁護士東忠宏)

気仙沼の弁護士東が,弁護士活動において考えたことなどを書いています。毎週日曜日に更新記事をアップするのを、目標とします。

債務整理ー給与差押え・預貯金差押え・自宅への動産執行の通知を受けた方に向けて①

こういう通知等を受けて,驚愕・混乱しつつも検索された方に,何か力になれればと思いまして。

 

第1 預貯金の差押えについて

これは,ある日,金融機関で記帳したら「サシオサエ」などとあり,金額が引かれていることで気づく,というパターンが多いかと思います。

あるいは,裁判所からの「債権差押命令」の「当事者目録」に金融機関名があり,「差押債権目録」の冒頭に金融機関名と店舗名の記載があるとか(で,記帳してみたら,上記「サシオサエ」などとなっている。)。

(なお,判決等を取得した債権者は,あなたが有している口座を,取引等を通じて元々把握していたからそこへ差押えをした,ということもあれば,ただグーグルマップなどで,ご自宅近くの金融機関を当てずっぽうで申し立てた,ということもあります。もっと周到な準備をした上でのパターンもあります。)

 

1 (よくある質問)「『サシオサエ』時点の残高は数百円とかだった。でも,今後,この口座に振り込まれる給与等も差し押さえられてしまうのか?」

→債権差押命令は1回当たり,その時点(=当該金融機関に差押命令が送達された時点)の残高を取る効力しかありません。すなわち,その債権差押命令には,今後に入金される金銭をも差し押さえる効力はありません。

 

もちろん,満額回収に至るまで,債権差押命令は何回申し立ててもいいので,債権者によっては,しばらくー半年とか,あるいは数年後ー同じ口座に債権差押命令を申し立ててくることもあるでしょう(その時に,残高に振り込まれた給与等が含まれていたら,その額ごと差し押さえられてしまう。なお,救済について後述。)。

 

2 (よくある質問)「今回差し押さえられたのは数百円だった。どうすればいいのか?」

→残高がそれほど大きくなければ,債権者にすれば,取立(債権者が当該金融機関から直接支払を受けること)をするにも費用や手間がかかるので,差押えを取り下げてくる可能性もあります(消滅時効中断のため,敢えて取り立てることもある。)。

 

貸金業者によっては,このように差押え手続をしても残高が乏しく回収できなかったことをもって,債権を償却処理し,以後,請求してこないということも,一応あります。

 

,,,では,以後,預貯金はすぐ下ろすことを心がけ,債務が消滅時効期間を経過するまで放置していたらいいのか?

→判決等は通常10年間有効で,かつ再訴などで時効を延長することもでき,その間に,あなたの親等が亡くなって,不動産を相続するなどしたら,相続した財産までも債権の引き当てになってしまいます。

むしろ,保有している資産が(失礼ながら)乏しいうちに,債務整理をしてしまうことも考えて下さい。

私も,しばらく前まで,複数の消費者金融・クレジット等の債務について,全て消滅時効援用で解決する依頼者について,「自己破産費用・そのための書類準備等の負担も要せずして債務整理を果たせた事態」のように捉えていましたが,そんなに単純なものではなく,多く・殆どの方が,時効に至るまで長い間,あれこれと悩み続けていたのが実情だと知るようになりました。

 

3 (たまにある質問)「今回差し押さえられた残高には,年金・生活保護費・給与などが含まれており,これを取られたら生活が出来ない。」

→すぐ弁護士に相談に行って下さい。

対処方法としては,

・ 民事執行法上の対抗策として,執行停止申立て+債権差押命令の取消(とか範囲変更)

・ 破産・民事再生申立てに伴う中止命令の申立て

などが考えられます。

これらの手続自体は,債務整理を取り扱う弁護士からすれば(急ぎ対応する必要があるので,多少の負担感はあるものの)それほど難しい手続ではありませんが,相談を受けた上で即時に動く必要があるので,費用面の取扱いをどうするか,という問題も早期に決める必要があります。

ある弁護士に相談のアポを取る→費用面で受任に至らず・次の弁護士へ・・・などとやっていては,実際に受ける弁護士の手持ち時間が大変なことになるので(その結果,上記対処方法の機を逃すことにもなりかねない),相談申込みの際,はっきりと,(例えば)給与が入金となっている預貯金差押えに対処してもらう事案で,弁護士費用として準備できるのは・・・などと伝える必要があるでしょう。

(まったく金銭的に余裕がない等の事情だと,法テラスの代理援助を利用できる+法テラス契約締結前でも動いてくれる弁護士を探すことへ)