三陸ラビリンス気仙沼(弁護士東忠宏)

気仙沼の弁護士東が,弁護士活動において考えたことなどを書いています。毎週日曜日に更新記事をアップするのを、目標とします。

我が起案法

先月から,中規模起案(10~20頁程度・対応する書証も10以上)が続いたので,備忘のためにも,現時点での起案術を書いておく。

 

1 なるべく資料を集める。

これは,私は結構うるさい。

書籍購入とか,国会図書館等からの謄写とかは多い方だろう。

外部専門家・団体も非常に重要。問い合わせの類は,なるべく早めに。

2 資料・判例を読んだ際,使えそうな箇所を,詳細な引用箇所の表記・使う意図と共に準備書面案(データ)に書き込んでおく。

依頼者からの話などで使うことも同様。

資料を読んだときに思いついたことが,後で分からなくなる・どこに利用価値があるのか分からなくなることが,残念ながらしばしばあり,また読み込む二度手間になってしまう。

3 あまり早期に,仕上げてしまおうと思わないこと。

私は,準備書面等の締切りを守れないことが年に1,2回あるかないか,という弁護士としては珍しいタイプである(その1,2回だって,敢えて戦略上することで,実際には提出できるのだ。)。

ただ,あまり早期に第1案が出来てしまうと,伸びしろが乏しいから注意する必要がある。

4 3と矛盾するが,取りかかると,思いもよらない問題点に気付いたり,集めた資料では分からない問題点が判明したりもする。

そう,伸び代の関係で,あまり早くに取りかかってもいけないし,あまり遅く取りかかって,資料集めとか関係者からの聴取り・協力要請のための時間が無い,というのもダメである(そうなると,まだ前者の方がマシなのか。)

5 2回くらいに分けて,第1案を書くこと。

起案で多いパターンは,10超の書証について,それらを読み込んで統合するとこうなりますよ,という準備書面である。

そうすると勢い,それら書証・他の主張・書証との対応関係を頭に入れた,短期間で仕上げてしまわないといけない。

が,これを一晩とかで仕上げる,,,と思うと辛くなるだろう。

起案は貨物電車の走行のようなもので,最初は進まなくても,勢いがつけばあっという間だということは重々承知しているのだが(私も13年やっているので),それでもいつも辛い気がする。

そこで,まぁ最初は,他の仕事とか事務所の雑務とかを片付け,見たいサイトを見たりして,起案せざるを得ないようにする。接見も済ましておくといいだろう。

(私のように家族持ちなら,子供らと遊ぶ・習い事とかの日程も睨んで,起案の時間を見定める必要がある。)

で,箇条書きでも良い,書証の要旨の報告が連なっているという感じでも良いと思いながら,だんだんと書いていく。

そう,どうも資料集めが充実すると,その成果を全て披露する大作主義でやりたくなり,それがしんどいと思ったりするのだが,いやいや,資料は十分なのだが筋だけで書くぞ,と取りかかってみると進むのだ。

一回で仕上げようと思わず,ある程度書いたら,必要な項目を先に書いてしまう,ということでもいいと思う。

一方で,やはり最初が大事だから(一度書くと,それでいいかとなってしまうこともあるから),しつこく考えることもする。

最初は5割を目標として,できればまとまりを書いて終わりとはせずに,次の部分の出だしも書いて終わり,としたい。

 

そこまでできれば後は自動で,次は,前回の中途案までを見直し・ブラッシュアップしつつ,さて続き,,,ということの連続で,何となく仕上がってしまう。

 

6 だが,弁護士一人の頭で仕上げてしまわないこと。

つい,事実関係を含めて都合の良い断定をしたり,よく分かっていない業界のことを簡単に整理してしまったりする。

弁護士が起案でまとめてしまうと,依頼者も,それをベースに考えてしまいがちである。

だから,5の起案は,8割程度の仕上げとし,それを依頼者に見せ,更なる聴取により仕上げることが肝要である。

そうすると,事実関係の詳細が付いて,さらに起案が良くなったり,あるいは経験則とかものの考え方が,話し合いの内に深まることもある。

分岐点があるような起案だと,これを早めにする必要がある。