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この年末年始に読んで,大変感心しました。
多分,この数年来の読書の中で,一番くらいに胸打たれたと思います。
この数年というと,丸谷・山口ばかり読みふけり,近時は池波も読んだりと,そんな中での話しです。
私がずっと抱えていて,友達やイソ弁にしつこく話して辟易されていたであろう,
1 西洋は世界を制したところ,それがたまたま人権思想を持っていたと考えるべきなのか,あるいは,人権思想を持っていたからこそ,世界を制したと考えてよいのか
(→近代戦争の戦闘員には基本的教育が前提で,また,近代的兵器を均一な質で大量に作る必要がある。それらの前提には,大量消費社会〔が前提とする社会の構成員や社会システム〕が必要で,そのためには共同体を破棄して,国民国家を作る必要があって,,,)
2 1に関し,ヨーロッパの側にたまたまアメリカ大陸があったから,新市場や奴隷でもって産業が発達したのか。
中国とすれば,たまたま側にオーストラリアがなかったせいで,主権国家とか国境線とかいう西洋のルールを押し付けられているのか。
などということについて,(もちろん,私のような愚問が立てられているわけではありませんが)それへの答えとなる見事な論述があります。
などと書くと,私が法律家としての素養に全く欠ける物の考え方をしているようですが。
(注:上記のような問題設定が書かれているのではありません。人権なんて一言も触れた本ではないのです。あくまで,本に書いてあることを敷衍すると,私なりの疑問の答えに繋がる,ということです。)
私は,ブームになる以前の内田樹さんの本が好きで,そこで初めて「互酬」という概念の重要さを知りましたが,それの位置づけがよく分かっていませんでした。
それが,また「周辺」とかを大学の夏期集中講座で聴いたことを,どうやら思い出し,ああ,そういう議論であったのかと,今さらながら思いました。
まぁ,哲学というのは,なんでも後付けで説明するためのものですが,この本を踏まえると,市場と国家の関係とか,民主主義・主権の関係とか,なにやら世の中の議論(議論する意義が)が全く虚しくなるような気にもなります。