三陸ラビリンス気仙沼(弁護士東忠宏)

気仙沼の弁護士東が,弁護士活動において考えたことなどを書いています。毎週日曜日に更新記事をアップするのを、目標とします。

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人間は,うまい具合に本を手に取る。
佐藤優「官僚階級論」読了。


下記の,かなり長い年数考えてきた疑問について,やっぱりそうか,,,という答えが書いてある本でした。
(もちろん,佐藤優らしく,神学がどうのこうの,マルクスがどうのこうので,直接書いているわけではありませんよ)

 

1 財務省の官僚は,なぜ,財務規律を求めるのだろう。政治家/選挙民の言いなりになって,消費税その他税を廃止/軽減したらいいではないか。その結果,国家財政が破綻したところで,それは国民の選択であって,別に財務官僚が気に病むことではないのではないか。
もちろん,財政破綻時に,国民は財務官僚を非難するかも知れないが,それも含めての好待遇じゃないのか。


2 警察・検察庁は,なぜ取調べの全面可視化・全面証拠開示に反対するのか。
国民が求めるとおりに全面実施したらいいではないか。
その結果,本当に治安が悪化したところで,別に国民の選択の結果なのだから,法律に従って可視化・証拠開示したまでで,警察・検察が責任を感じることないではないか。


3 1,2のようなことについて,官僚の反論の内容は想定されるけれど,それは,官僚自身の自己実現なんじゃないのか。
公務を通じての自己実現って,そんなことをさせるために公務はあるのだろうか。
(長期過密勤務が,彼らに,職業生活を通じた自己実現へと誘導しているのではないか)

 

4 学生の頃,真渕勝(政治学,当時は市大)先生に「車検の自己点検制度を例にした政・財・官の『鉄の三角同盟』を講義で聴いたが,なぜ官僚が権益を伸ばそうとするのかが分からぬ。権益が増えたら仕事も責任も増えて大変ではないか。」と質問した。
その後もなお,個々の官僚がラットレースに巻き込まれるのは分かるけれど,その評価基準が省としての権益を伸ばすこと,にあることが腑に落ちない。


5 絶対王政下・身分制議会での法を用いての統治のあり方が,なぜ民主政治になっても(権力主体が違うとされるだけで)同じようなものなのか。


6 選挙に投票しなくては白紙委任になるという。
しかし,一人一票の威力はまことに慎ましく,単に当該選挙や現行の統治形態に正当性を与えることだけが求められているのではないか。

 

これら他に,柄谷行人トランスクリティーク」「世界共和国へ」を解説して答えてくれています。
これら両著に,佐藤は結論は賛成できないと書いていますが,その本意はなかなかの扇動,アジテーションだと思いました。

 

以上は,FBにも投稿。以下付記です。

 

1については,実は,財務官僚に直接聞いたことがあります。

それに対する答えは,「なぜ人を殺してはいけないのか,と聞かれたようなものだ」でした。

まったく,よく分かります。

 

私は,刑法は,鶏舎の監理者が,他の鶏の邪魔をする悪い鶏を隔離・膺懲するためのものではないかと,わりに実態を見ていたつもりですが,まだ全体が見えてませんでしたね。