三陸ラビリンス気仙沼(弁護士東忠宏)

気仙沼の弁護士東が,弁護士活動において考えたことなどを書いています。毎週日曜日に更新記事をアップするのを、目標とします。

漁船に家族(ことに子ども)を乗せることについて

1 漁船にはJCIの検査は要しないが,それは漁船として用いるのが前提

家業としての沿岸小規模漁業においては,幼いころから海に慣れさせるため,子どもを幼少期時分から漁船に乗せて連れ出す,ということがよく行われているようです。

ところで,小型船舶については,船舶安全法所定の検査(日本小型船舶検査機構〈JCI〉)を受けなければならないところ,漁船については例外として同検査を要しません(船舶安全法2条,附則32条)。

これは当該小型船舶につき漁船として用いる場合の例外ですから,たとえ普段,漁船として用いている船であっても,一時的にといえレジャー(レクレーションとしての釣りとか,観光目的での運行等)として船を用いるのであればその際は上記検査を要し,これを欠くことは同法違反です(同法18条)。

(→JCIの検査を受けていない漁船は,漁船としてしか用いてはならない。)

 

2 漁船に子どもを乗せていることへの取り締まり

平素,我が子に漁を手伝ってもらっていたところ,子が漁船に乗っているところを海上保安署の職員に現認され,手伝いの実情をいくら説明しても「そんな小さい子を乗せている以上,漁船としての利用の仕方ではないから船舶安全法違反だ」と聞き入れられず事件化され,捜査→罰金となってしまう,という事案が近時あるそうです。

 

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海上保安署のチラシ(赤丸・波線は私が付しました)

 

これは海上保安署のチラシですが,「子どもであっても漁業目的の乗船は認められるのですよ」という基本・スタートラインが,ちょっと伝わりにくいようい思います。

 

3 私の取り組み例

さいころから船に慣れさせ,海に親しませることによって漁業を代々承継してきた浜の取り組み(聞いた話しでは,当地の一部では,シーズンによっては漁の手伝いとて学校の時間をずらしていた時代まであったそう)に調和させつつ,法は解釈されなければならない・少なくとも一律○歳までは乗ってはいけないなどという運用がなされてはならないでしょう。

 

同種事案に遭遇された方が本ブログに辿りついたとして何かの足しにならないか,元依頼者の承諾を得た,私が海上保安署に対し提出した意見書の一部を,匿名化しつつ披露する次第です(事案の解決としては,送検後に不起訴)。

重要な点は,「陸廻り」であっても(適法な漁船乗船者である)「漁業従事者」となる,ということです。

 

宮城海上保安部 気仙沼海上保安署 御中     

                   意 見 書           

                                         令和3年●月●日 
                                                   弁護人 東 忠宏  

1 本件当時,被疑者の息子・●は,被疑者の指示の下,
  ① 船の係留ロープの補助(貴庁職員も,当日現場において,同息子が,係留時にロープを引っ張っている・船を抑える等の作業をしている姿を現認したはずです。),
  ② その他,周辺に浮遊物・障害物がないかの見張りなどの活動
  等をしていました。
   また,同息子は,本件以前の乗船時・下船後も,①・②のほか,被疑者の指示に従って,漁具の運搬,採取物の収納や運搬,メカブを削ぐなど多様な作業をしています(添付写真●枚〔令和2年●日撮影←陸廻り=直接漁労作業とくっつき密接不可分の陸上作業をしている。〕も参照)。
2 前項の同息子の被疑者の下での活動は,雇傭関係のうち「近代化しない家族労働の関係」(金田偵之「実用漁業法詳解」21頁)といえ,漁業法2条2項の「漁業従事者」といえます(なお,いわゆる陸廻りも「漁業従事者」に含まれます〔同書22頁,佐藤隆夫「日本漁業の法律問題」80頁〕)。
 そうすると,被疑事実当時の,当該船舶の利用の仕方は,漁業者・漁業従事者による漁船としての使用として,何ら問題がなかったといえます。
3 また,被疑者が,令和3年●日の取り調べ時,●氏(海上保安庁職員)に対し話したとおり,被疑者は当該船舶に同息子を乗せて磯草(ヒジキなど)の成育状況を見に行ったりしたことがあるなど,同息子につき,更に「漁業従事者」としての成長を促すべく,指導・育成をしていました。
   この点,「漁業従事者」の意義について考えるに,当初からいきなり万全の活動ができる者などいるはずもないこと及びその育成過程における乗船も適法と解すべきこと(育成過程における漁船への乗船を,一律「漁業従事者」ではない者の乗船として船舶安全法違反と解するのは現実的ではない。)から,1項程度の稼働をしているのであれば,十分「漁業従事者」と解すべきでしょう。
   このような解釈は,幼いときから船に慣れされる・慣れさせたい,という地域の実情にもよく合い,水産業の将来の担い手を育成するためにも合致するといえます。
   一人前の漁師並みの活動ができるまでは登録船舶で練習をさせる・家族の漁船には乗せない,練習を経て万全の活動が出来るようになってからようやく「漁業従事者」に該当するものとして漁船に乗られるようになる,というのは現実的ではありませんし,古くから子どもらも家族の漁業を手伝ってきた実情にも合いません。

債務整理ー給与差押え・預貯金差押え・自宅への動産執行の通知を受けた方に向けて②

第2 給与差押え・自宅への動産執行の通知

 

これら裁判所からの通知を受け取った場合について。

 

「1/4でも給与の差押えがされたら生活できない。」「執行官が自宅に来たら,家族に債務が知られて大変困る。」

→すぐ弁護士に相談して下さい。

 

対処法は,先のブログ(①)の3と同じことが考えられますが,私は,破産申立てに伴う中止命令申立てとすることが多いです。

 

ここからは,この「あと○日で給与支払日のところ,給与差押えがなされた(or動産執行が○日後と指定されたなど)と言う相談者が来た」場面を想定した,取扱経験がない弁護士さん向けの記述です。

 

⑴ 初回相談のタイミングで,債権者・第三債務者の資格証明の取付けも始めた方がいいでしょう(庁によっては,中止命令の申立てに際しては略してくれる場合もあるが。)。

⑵ 債務名義を残していない相談者も多いので,その謄本取得のため,当該事件の委任状も取得しておいた方がいいでしょう(債権者に連絡してコピーをもらうのも手ですが)。⑷のとおり,執行事件用の委任状も必要です。

⑶ 次回の打ち合わせ日を数日後とかに設定し,その際に依頼者が集められた書類等でもって,普段の6~7割程度の出来でも取りあえず申立て,中止命令申立ても添える,ということになるでしょう。

まずは中止命令,本体は追完,追完で。

私の経験上,中止命令は,まず翌日までには発令されます(個人再生申立てに伴う根抵当権実行手続中止(民事再生法31条)ー住宅ローンではないーで大分揉まれたことはあります。)。

⑷ 破産裁判所が中止命令を発令しても,その正本を,執行裁判所に提出しないと,執行手続は止まりません。破産裁判所が支部・執行裁判所が本庁とかだと,その送付の所用日数とかも見越して準備する必要があります。

執行裁判所への提出に当たっては,当然,執行事件用の委任状も必要です。

(なお,給料日の時期によっては,代理人から債権者・第三債務者に直接,中止命令が発令されたので取立てをするな・応じるなと連絡してようやく間に合う,というタイミングもあり得る。)

⑸ 給与差押え=第三債務者が勤務先だと,中止命令(これを受けた執行裁判所からの通知)の内容からして,破産を申し立てたことが知られます。そのことを,依頼者に予め説明しておく必要があります。

⑹ 「給与差押えが中止になったところで,給与の1/4の取立が止まるだけ・1/4は勤務先がプールするので,債務者が生活できないことには変わりないじゃないか。」

←中止命令を得たら,債権者に連絡して,債権差押命令の取り下げを求めるのです。

債権者としても,取り立てできない差押えを残しておく意味はないので,通常は取下げに応じてくれます(そういう実務を形成して行くべく,皆でその様に働きかけをしなければならない。)。

 

受任通知を送ったら債権者からの取立が止まる,以後,依頼者がなかなか破産申立ての準備に動いてくれない,,,は弁護士あるあるですが,この差押えに対する破産+中止命令の申立ては,そういう懸念がなく大急ぎで準備が進んでいくので,私は結構好きです。

毎年,年に1,2回はしています。

なお,動産執行は,中止命令が出るとヤレヤレということで,取下げに向けて働きかけるでもなく,つい存在自体を失念してしまいがちですが,取下げにならないのであれば,破産手続開始決定正本の提出も忘れずに。

 

【追記】

改正民事執行法によると,給与につき取立権の発生時期は,(養育費債権等を除き)債務者への送達から4週間となりました。

もっとも,上記⑹のとおり,取り立てされなくとも第三債務者は支払をプールしますし,債務者側の中止命令申立て取り組みの眼目は,それを得た上で債権者に差押えの取下げを迫るところにあります。

 

 

 

債務整理ー給与差押え・預貯金差押え・自宅への動産執行の通知を受けた方に向けて①

こういう通知等を受けて,驚愕・混乱しつつも検索された方に,何か力になれればと思いまして。

 

第1 預貯金の差押えについて

これは,ある日,金融機関で記帳したら「サシオサエ」などとあり,金額が引かれていることで気づく,というパターンが多いかと思います。

あるいは,裁判所からの「債権差押命令」の「当事者目録」に金融機関名があり,「差押債権目録」の冒頭に金融機関名と店舗名の記載があるとか(で,記帳してみたら,上記「サシオサエ」などとなっている。)。

(なお,判決等を取得した債権者は,あなたが有している口座を,取引等を通じて元々把握していたからそこへ差押えをした,ということもあれば,ただグーグルマップなどで,ご自宅近くの金融機関を当てずっぽうで申し立てた,ということもあります。もっと周到な準備をした上でのパターンもあります。)

 

1 (よくある質問)「『サシオサエ』時点の残高は数百円とかだった。でも,今後,この口座に振り込まれる給与等も差し押さえられてしまうのか?」

→債権差押命令は1回当たり,その時点(=当該金融機関に差押命令が送達された時点)の残高を取る効力しかありません。すなわち,その債権差押命令には,今後に入金される金銭をも差し押さえる効力はありません。

 

もちろん,満額回収に至るまで,債権差押命令は何回申し立ててもいいので,債権者によっては,しばらくー半年とか,あるいは数年後ー同じ口座に債権差押命令を申し立ててくることもあるでしょう(その時に,残高に振り込まれた給与等が含まれていたら,その額ごと差し押さえられてしまう。なお,救済について後述。)。

 

2 (よくある質問)「今回差し押さえられたのは数百円だった。どうすればいいのか?」

→残高がそれほど大きくなければ,債権者にすれば,取立(債権者が当該金融機関から直接支払を受けること)をするにも費用や手間がかかるので,差押えを取り下げてくる可能性もあります(消滅時効中断のため,敢えて取り立てることもある。)。

 

貸金業者によっては,このように差押え手続をしても残高が乏しく回収できなかったことをもって,債権を償却処理し,以後,請求してこないということも,一応あります。

 

,,,では,以後,預貯金はすぐ下ろすことを心がけ,債務が消滅時効期間を経過するまで放置していたらいいのか?

→判決等は通常10年間有効で,かつ再訴などで時効を延長することもでき,その間に,あなたの親等が亡くなって,不動産を相続するなどしたら,相続した財産までも債権の引き当てになってしまいます。

むしろ,保有している資産が(失礼ながら)乏しいうちに,債務整理をしてしまうことも考えて下さい。

私も,しばらく前まで,複数の消費者金融・クレジット等の債務について,全て消滅時効援用で解決する依頼者について,「自己破産費用・そのための書類準備等の負担も要せずして債務整理を果たせた事態」のように捉えていましたが,そんなに単純なものではなく,多く・殆どの方が,時効に至るまで長い間,あれこれと悩み続けていたのが実情だと知るようになりました。

 

3 (たまにある質問)「今回差し押さえられた残高には,年金・生活保護費・給与などが含まれており,これを取られたら生活が出来ない。」

→すぐ弁護士に相談に行って下さい。

対処方法としては,

・ 民事執行法上の対抗策として,執行停止申立て+債権差押命令の取消(とか範囲変更)

・ 破産・民事再生申立てに伴う中止命令の申立て

などが考えられます。

これらの手続自体は,債務整理を取り扱う弁護士からすれば(急ぎ対応する必要があるので,多少の負担感はあるものの)それほど難しい手続ではありませんが,相談を受けた上で即時に動く必要があるので,費用面の取扱いをどうするか,という問題も早期に決める必要があります。

ある弁護士に相談のアポを取る→費用面で受任に至らず・次の弁護士へ・・・などとやっていては,実際に受ける弁護士の手持ち時間が大変なことになるので(その結果,上記対処方法の機を逃すことにもなりかねない),相談申込みの際,はっきりと,(例えば)給与が入金となっている預貯金差押えに対処してもらう事案で,弁護士費用として準備できるのは・・・などと伝える必要があるでしょう。

(まったく金銭的に余裕がない等の事情だと,法テラスの代理援助を利用できる+法テラス契約締結前でも動いてくれる弁護士を探すことへ)

 

記録閲覧や共同受任などなど

1年少し空いての投稿です。

 

1 この1年余の間に,たまたまですが,

① 私が,東北で交通事故事件(被害者側)の第一人者と思っている方との共同受任,

② 過労死事案で相当の経験をお持ちの方との共同受任,

③ 私が法人の破産申立側ー管財人が全国でも有数のレベルの方,

という僥倖に巡り合わせました。

 

2 「施行令二条二項にいう「同一の部位」とは、損害として一体的に評価されるべき身体の類型的な部位をいうと解すべきであるところ、本件既存障害と本件症状は、損害として一体的に評価されるべき身体の類型的な部位に当たるとは認められないから、「同一の部位」であるとはいえない」で有名な,東京高裁平成28年1月20日判決・判例時報2292号58頁につき記録閲覧のため,原審のさいたま地裁に行ってきました。

(「弁護士13人が,,,」https://www.amazon.co.jp/dp/B07N7SF3JB/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1で書いたとおり,私は記録閲覧による勉強に凝っています。)

(仙台本庁では,それこそ手当たり次第ですが,遠隔地となると調べてから行きますので,メジャーどころでは①「訴訟の心得」の中村直人弁護士のお名前を見つけて,ジェイコム株大量発注事件の記録を読んだり〔民法商法学者がオールスターで意見書を出していた。〕,②荒井哲朗×高野隆に惹かれて最高裁平成28年9月1日公刊物未裁を読んだり〔この事件は,荒井先生の取り組みが分かる,訴訟係属時から後の最高裁への伏線が張られた小説というレベルの事件記録でした。〕)

 

3 さて,それらを踏まえての感想などを,及ばずながら書き付けておきたいと思います。

⑴ 1①の訴状や続く医学分析は,率直にいって,私の発想・レベルを遙かに凌駕していました(その先生も,当該事案はSクラス=最高難度だと言われていた。)が,責任論や損害論では私も相当に注力させていただき,結果,私が一人で受任していた時分では,到底考えられないような成果が出て(裁判官の巡り合わせもよかった。),依頼者にも大変喜んでいただけました。

⑵ では,1②・③・2なども,やはり全く思ってもみなかったような分析が展開されたり,書証が提出されているのかーというと,そうではない。

これは,不遜な意味で言っているのではありません。

そこにあるのは,一つ一つは,まあ,普段の実務で見る範疇の書面だったり,証拠が殆ど大半を占める。

正直,書面も無骨で,項立てがない文章が続いたりとか,読みやすさへの十分な配慮とまで行っていないものもある(ただし,冗長とかはないです。)

ただ,何かが違い,そこが,例えば2などは裁判所を説得し,自賠責実務の変化すらもたらしている。

その「何か」を知りたいですよね?

それは言語化できるような,チェックポイントなどで定型化できるようなこと(するとしたら,お題目的になってしまうだろう。)ではなく,体得するしかないようなものなのですが,私はこんなことばかり考えているので,薄々イメージは付いてきたと思っています(続く)。

 

 

平成30年の取組など

夏休み明けくらいから,なかなか忙しい日々が続いています。

たまに朝8時30分から夜7時まで,30分~1時間刻みで打ち合わせ10件超とか。

そこに刑事の新件が来たり(私は利益相反がない限り、公的関係は何でも受けるのが信条。勾留前の当番弁護で、被疑者援助を申請しないことはほぼない。)。

まあでも,それくらい忙しい方が,私はペースを発揮しやすいです。

たまーに不意に暇が続くときがあるのですが,かえってペースが掴めず,仕事がはかどらない。

 

さて,今年最初で最後の投稿ということで,今年の振り返りを。

 

第1 論考を世に出せた。

地方の支部弁護士としては望外のことで、おそらくこんな年は二度とないでしょうから、記念に書いておきます。

1 「自由と正義 2018年Vol.69 No.1〔1月号〕」において,座談会「研修の達人に訊く」~これであなたも免許皆伝!日弁連研修 驚愕の活用法~

に「研修の達人」なる紹介で登場できました。

日弁連eラーニングを視聴するのが「趣味」で,外国関係以外はほぼ全部視聴している特異な会員だということで,取り上げてもらえたようです。

平成27年5月に,荒井哲朗「諦めない債権回収」を視聴して感激し,こんな役に立つものを,なぜ今まで放置していたのかと大後悔。

最初の年度内に200くらい聞いていたと思います。

今も,(当該記事とは異なり)週に3日,早朝出勤する日を決めて,その際に聞くようにしています。

2 「日弁連研修叢書 現代法律実務の諸問題<平成29年度研修版> 」において,「地方弁護士の捜査弁護の実情―勾留に対する準抗告を中心に―」

まあ,今振り返っても,私は刑事弁護畑ではないので気恥ずかしいのですが。

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日弁連研修叢書 現代法律実務の諸問題<平成29年度研修版> / 第一法規ストア

3 「個人再生の実務Q&A120問 (全倒ネット実務Q&Aシリーズ)」において,「Q57 第三者が出捐した債務者名義の保険・預金の評価方法」

これは,先輩方の指導を受けながら。

いい勉強になり,一流の本の作成過程に触れられました。

そして,この手の本は,大量の素材を集めた上で,バッサバッサと切り捨てて要約するものです。具体的問題に当たったら,原典に当たらなければなりません。

調査のとっかかりに過ぎない。

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きんざいストア

4 「弁護士13人が伝えたいことー32例の失敗と成功」

ボスの弁護士登録50年の集まりをしようと呼びかけたら,こんなことになりました。

序文で感激,今月に登録50年のお祝い兼出版パーティーで,大阪弾丸ツアーを敢行しました。

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弁護士13人が伝えたいこと|日本加除出版

 

第2 研修の講師もした。

いずれも仙台弁護士会で,

1 3月「裁判員裁判手続に関する基礎研修『被疑者弁護人としての諸活動』」

2 6月「個人再生事件処理に関する研修会」

一人が,刑事と民事の講師をするなんて,地方ならではですが。

弁護士向けの講演は,準備がムチャクチャ大変でプレッシャーもあります。

体系的に整理する絶好の機会で,本当に勉強になりますが。

これのお陰か,今年は例年になく,たしか5,6件の個人再生を受け,かつ,それらは(非住宅ローンで)担保競売停止とか,アンダーローン事案とか,ローン支払い中の車の維持とか,手のかかるものばかりでした。

 

第3 事務所の体制を大きく変えた。

1 私のPC環境の更新

PCを更新し,合わせてモニタを5台!としました。

①文書作成,②証拠説明書作成,③判例検索,④書証(PDF)閲覧,⑤ネット・SNSが同時にできて,大変快適です。

 Google Maps: Report Inappropriate Image のモノクロの写真のやつです。

2 事務所LINEアカウントによる依頼者とのLINE・1:1トークモードの運用

大変便利!

これで,大幅に依頼者とのコミュニケーションが進むようになった。

細かいタイミングでの報告もできるようになり,好評です。

3 事務処理

証拠説明書を「三段組み」とするようにしました。

成果は追ってご報告します。

一太郎も更新して,だいぶビジュアル面を意識した書面を作成できるようになったと思います(表やPDFの盛り込みが,更に増えた。)。

あと,多分今年から,不明・要再考の箇所に●を付すようになり,見直しが大分楽になったと思います(それまでは,※とか空白だったが,●は目に付きやすい)。

4 書籍・雑誌のPDF化

これも,ようやく取り組みました。

ただ,省スペース以上の活用にはまだ至っていないかも。

PDFへの書き込みは,便利で大分使えるようになってきました。

PDF化する前に、本・雑誌をざっとでも読むようになったのは大きいかも。

5 高裁記録閲覧!

ついに,前々から思っていた,(受任していない事件につき)高裁記録を適宜閲覧して勉強する,ということを始めました。

想定以上に勉強になります。もっと早く始めればよかった。

(この、他人の記録に注目する、というところは、先の「弁護士13人・・・」本でも言及しています。)

「紛争解決の失敗学」としても,各弁護士の取組を見るとしても,あるいは判例雑誌には掲載されない,本当の裁判実務の実情を知るという点でも,大変勉強になります。

これを始めたから,証拠説明書三段組みとか,準備書面の読みやすさとかに取り組めたし(調停員としての経験も大きい。),あるいは難しい事件でも粘り強く交渉を,ということになったと思います。

(弁護士が,手元の書類作成で満足するのは下の下。相手・関係者とコンタクトを取り,紛争処理を目指さなければ,裁判でも成功はないことをつくづく思い知らされる。)

来年から,東京高裁に出張しての勉強もすることにしました。

 

と,長々書き,このように整理してみると,なるほど,今年(=41歳。弁護士16年目に突入)は自分なりの取組に拍車がかかった年だと思います。

最近、ようやく、今更ながら、「争点整理」とか「立証構造」の意味が、この世界に入って短くないはずなのに、やっと腑に落ちてきた気がするのです(って、ひどいね。)。

 

でも,何が変わったって,やっぱり●●●が変わるだけで,これだけ裁判実務は変わるのか!と驚いたし,それが一番かも。

平成29年について

今年も残すところ,今日を含めて2日となりました。

 

私にとって,今年の重大事といえば,夏期特別研修の講師のため,ともかく準備を頑張ったことです。

この準備の過程で,刑事事件に限らず,およそ弁護士業務はこう取り組めばいいのではないかな,というヒントを沢山得ました。

業務の進め方の変革となり,最初は身に余る大役だと尻込みしましたが,やってよかったと思っています。

(「現代法律実務の諸問題」掲載のため,新年から原稿のチェックに入らなければなりません。)

 

くどいようですが,事件進行については,この1年で,だいぶ考え方が変わりました。

この成果が来年以降でると,いいなーと思っています。

 

個人的なこととしては,家族が家族でいられる時間は実に短いと自覚し,子供らとなおよく遊ぶようになったこと,ダイエットで標準体重となったのもつかの間,やや+アルファでなんとか維持・堪え忍んでいる状況です。

でも,食生活の在り方が大いに改善されたことは良かったと思っています。

 

ついに40歳,同期達のまぶしい活躍を見るにつけ,この10年の過ごし方でだいぶ差が付いてしまったと思ったりもしますが,いえいえ,私もこの10年をそれなりに過ごしましたし,ここからも頑張りますよ。

 

「汽車ポッポ判事の鉄道と戦争」のことなど

ゆたかはじめ著の標題の書籍を読了。

筆者は,東京高裁長官を平成初期に定年退官された方。

 

驚いたのが,昭和37年に秋田駅の一日駅長をされたとのことだが,その際,出発の指示,お客さんへの対応,信号の操作,詰め所から駅弁屋まで廻るなど,本当に「駅長」の仕事を一日していること。

もちろん,当時も現職の判事だった。

 

実は,私も気仙沼線が,私の誕生日と同じ昭和52年12月11日に全線開通したという奇縁で,平成19年の30周年の際(=私も30歳だった),気仙沼駅の一日駅長を勤めたことがあるのだけれど,制服を着て本物の駅長と電車を1本見送る程度のことで,あっという間にお役御免となったのだった。

 

ともあれ,標題の著書は,大変趣味のよい判事の人生が,素敵に描かれていた。

(一方,裁判官らしく,真実発見ということを,いかに被告人らに騙されないか・嘘を見抜くかということと捉える記述が散見され,残念に思ったり,彼らはそう考えているのだよなと再確認させられたり)

 

今,大竹たかし「裁判官の書架」を少しずつ読んでいる。

まだ序盤だけれど,もう何と言うか,昭和の正しいリベラルおじさん像がひしひしと伝わってくる。

思えば,私が子どもの頃,こうしたものの考え方こそスタンダードだったのに,と思わされたり,それがこうして残っている司法にまだ希望を持ったり。

 

そのような司法が残っている,と私に思わせたのは,もちろん,そのようなことが書かれた当該書籍を読んだからだけれど(正直言って,法律実務をしていて,高裁の部総括クラスが,どのような思想・背景をもっているかなんて,なかなか伝わってこない。),そのことについて,更にしつこく考えた。

 

すなわち,戦前の社会の様子を描いた随筆などを読みつけていると,どうしても,旧制高校・帝大を卒業した人の観点から,かつての社会を俯瞰することになってしまいがちである。

彼らが,今も流通市場に乗る多数の随筆などを残し,庶民は(そのような市場流通性,例えば文庫化されるような)文字を殆ど残せなかったからである。

 

その点で,東京高裁部総括(また長官)を務めた方々の本を読んで,裁判官の良識に心打たれたり,司法に希望を持つのもいいけれど,もっと目立たない,けれども庶民のために尽力したり,あるいは生活者としての法曹の姿を捉えたり,その前提として何かに残す意義はあるのだろう。

(そう思うと野島梨恵先生「私の愛すべき依頼者たち」はよかった。)

 

ここまで考えていたところ,そうすると各単位会に残っているだろう歴代の会報,それに掲載されている職務や生活の模様を織込んだ投稿,あれをなんとかピックアップしたものを面白く整理できたら,,,と思わずにいられない。